意味が…わからない。

俺のことが好きだから、他のヤツと付き合う?

こんなに辛い思いをしてまでも?


「好きだ…っ。俺、流羽だけが好き」


俺はどうすることも出来なくて、言葉を発する代わりに、有貴を更に強く抱き締めた。

煩く鳴り続ける心臓など気に止めず、力の限りで抱き締める。

こうすることで、有貴の心が少しでも救われるように…


「気分…楽になったか?」


有貴の肩に手を置いて、真っ直ぐに見つめて尋ねる。


「ありがとう、流羽。すごく落ち着いた」

「そうか…良かった」


ホッとして、顔から思わず笑みが零れた。


「俺もまだまだ子供だよな…」

「…そんなこと、ない。辛かったら、我慢しないで誰かにすがった方がいい」

「次からは、そうしてみようかな。じゃあ、そろそろ戻るな…」


ゆっくりと立ち上がる、有貴。


「気を付けて帰れよ!」


走り出す有貴を、大きく手を振って見送った。

有貴は1度振り向いて、手を振り、そのまま闇へと消えて行った。