「ばかバカ馬鹿!有貴くんの大馬鹿ぁ!」


月曜日。

教室に入ると、城崎が何やら喚いていた。

そんな城崎が少し気に掛かり、声を掛けてみた。


「城崎どうした?珍しいな…普段は真面目なのに取り乱すなんて」

「幸村ぁ…あたし…有貴くんにフラれたぁ」


椅子に座りながら足をバタつかせている。


「ま…じ、か」


けじめをつけるとは言っていたけど、まさかこんなにもすぐに…


少し離れた席に座る有貴を、ちらりと盗み見た。

有貴の表情は、いつもと何1つ変わらない。


「でね、すっごく冷たい表情で…こう言ったの。城崎さんのことはもう愛せそうにない。別れよう…って」

「そ…それで?」

「あたしは、有貴くんが望む女の子になるから!だから別れるなんて言わないでって。でもね…城崎さんには無理だ、ってそう言い残してその場から去って行ったのよー!?去り際までカッコいいなんて思っちゃったりしてないから!その辺、勘違いしないでよ幸村!」


いやいや、そう言われたら勘違いせざる得ないから。
確かに…城崎には無理だ。

んなの、性転換しろって言ってるようなもんだろ?

有貴は、俺に相当本気みたいだし…


「城崎は優しいから、すぐに新しい彼に恵まれるよ。それまでの辛抱だ」


とりあえず今の俺はこう言うしかない。

城崎は本当に良いヤツだし幸せになってほしい。

頑張れ、城崎!

有貴が俺のことが好きだって知っても、呪ったりするなよ?


「…ありがと、幸村。あたし、頑張るよ!だから幸村も頑張ってね。幸村にはゆーちゃんがお似合いだって本気で思うもん!」

「おう。あと、間違っても有貴を逆恨みしたら駄目だからな…?」


…俺のこともね。


「大丈夫!有貴くんの良いところは誰よりも知ってるつもりだし、有貴くんを責めるつもりなんて無い。…じゃあ、あたしゆーちゃんにも報告して来るから!」


城崎は、台風のように俺の前から消えて行った。

もう1度有貴の方を見てみると、有貴もこちらを見つめていた。

数秒間睨み合った後、有貴は口元に緩やかな弧を描いた。