有貴の家の呼び鈴を鳴らせば、お兄さんが扉から爽やかな笑顔と共に「おかえり」と言って出て来た。


有貴には悪いが、どうしてもお兄さんがそんなことをするような人には思えない。

話を聞いた時、酷いと思ったし、こんなことは確かに普通じゃないとも思った。

だけど実際そのお兄さんを目の当たりにすると、そうは思えなくなるんだ。


お兄さんは、自分勝手に有貴を抱いているんじゃないと思う。

多分、お兄さんなりにいろいろ考えていることがあるんだ。


お兄さんの有貴を見る目は、どこか切なくて。

その目がそれを物語っている。


「君はさっきの……」


お兄さんが、俺を見て言った。


「あっ……!」


さっき病院で、自己紹介の途中だったのを思い出した。