情事の後。

兄貴はいつも寂しく笑って、口癖のようにこう言う。


「有貴…ごめんな。こんな兄貴で、ごめん…」


何度も何度も謝る兄貴に背中を向けて、俺は黙ってそれを聞く。


兄貴は、残酷だよ。

そんな風に謝られたら、期待しちゃうじゃん……

期待して、自惚れて、あわよくばって。

結局いつも最後に傷付くのは、自分。


わかってる…わかっている筈なのに、どうしてこうも繰り返してしまうのだろう。


俺と兄貴の関係は、あってはならないもの。

同性同士な上に、血の繋がった兄弟。

最早異常だ。


誰かに頼りたい。

誰かにすがりたい。

どうすれば、俺は救われる?


俺は誰を信じればいいのか、わからなくなっていた。


重すぎる禁忌を犯し、あてもなくさ迷い続ける心。

心に重荷を抱えたまま、1人どうしようも出来なくて。


そんな時だった。

俺が1人の女の子に、恋をしたのは。