「はい。コーヒー、って微糖でよかったよね?」
「あ、うん。……ありがと」
「どーいたしまして」

この子は、私にとってこの学校で一番仲のいい、“友達”だ。
相手がどう思っているか、聞くのも恥ずかしいので私としては、だが。
同じクラス、前の席なので、よく話しかけてくれる。
私に足りないものを彼女は持っている。
あー羨ましい。


彼女は椅子をこちらに向け、私と向かい合う。
「ねぇ。ちょっと聞いてもいい?」
私がコーヒーのパックにストローをつけている時だった。
「あんたって、何でいっつもコーヒーなわけ?」
「じゃあ、ゆきは何でいつもオレンジジュース?」
ゆきのは、んー。と少し唸った。
「えと、おいしいし、それに…。酸っぱいから目が冴えるから……かな?」
「そ、私も同じ」
なるほどねー。と言うゆきのの頭の上には、漫画だったら電球が浮かんでいるだろう。
「ちっちゃいのにそんな所だけは大人なんだからなー」

ストップ。
ジャストアモーメント。
「今またちっちゃいって言った!?」
「いーじゃんかかわいいんだし」
頭をわしわしと撫でる。
また子供扱いして…。ほらほら、怒らない。誰のせいだと思ってるのよ……。あはは。

そう言えば、人のコンプレックス(私には身長)を遠慮なくつつく子だった。
でもそれは裏を返せば、暗黙の内に許される仲、だ。
案外悪い気はしない。
ゆきのも楽しそうだしね。


でもちっちゃいからって、妹みたいに扱われるのはまだ慣れない。
私が150センチもないせいなんだけどね。
たまに神様は不公平だ。








「あ、ねえ。そのネックレス」
ゆきのの首から、きれいな銀の十字架が揺れていた。
「いいでしょ?ユウジに貰ったの」
そう言うと、肩を少し過ぎるくらいの髪をどかせて、私の前でいじった。