追憶が、
私に問い掛ける。


追憶の中で、少年は。

心が何かを求める度に、
足を向ける場所が在った。


『あぁ、あの花を見に行こう』


何を求め、
其の地に行くのか。

今なら、解る。




サァ……

乾いた風に吹かれ、
柔らかな桃色の花びらが舞う。

ひらひらと、
其れは踊る様に少女に降る。


目の前の黒髪の少女は、


「ぱぱ、よわむしだから。るりが、おっきくなったら、たすけてあげるからね!」


そう言って、
無邪気に笑っていた。


桃色の、
柔らかな花びらに囲まれて…








『 追憶 ―箱庭の境界―』完