牧野が、ただ思いついただけ、って口調で言った。
 
浩之の心臓は、軽く反応した。
 
薫先輩?
 
仕事が出来て、スーツでもかっこよく着こなせそうで。

好みのツボにしっかりはまっている。

ああ、でも

「でも、彼氏がいるんだろ。

問題外じゃん」

「そんなの関係ない。

結婚してるわけじゃなし、奪っちゃえばいいんだ」

牧野はきっぱり言った。
 
牧野らしい、選択肢だ。
 
浩之は牧野を見て笑った。

 奪っちゃえばいいなんて、率直に言える牧野が羨ましかった。
 
浩之は、自分が薫先輩を嫌いじゃないことに気付いてしまたところで、自分にはどんな行動も起こせないことが分かっていた。