◆蒼衣

「おはよう、蒼衣」
「おはよう父さん」

私は高校1年生、
春日部蒼衣。
趣味は音楽を聴くコト。
ごくごく普通の女の子で、父子家庭です。
母さんは、5年前に亡くなったんだ。

「あ、今日はお弁当作ってないから、どこかで買いなさい」

父さんから、500円玉を渡される。
何食べようか。
パンにしようか。

「ありがと。
…って、今日の朝ゴハンどうしたの!?」
「それは…」

だって、おにぎり一つ。
おかずも何も無い。

父さんは普通の証券会社の正規社員だけど…
何かあった?

「すまん、会社が倒産しそうで、給料が入らなかったんだ」

そっか、昨日は給料日だったんだ。
てか、給料入らないコトってあるんだね。

父さんは、悲しそうな顔だった。

「って、嘘でしょ…」


呆然とする私を置いて、父さんは会社へ行ってしまった。

信じられない。
会社が倒産しそうだなんて…。

一人でおにぎりを食べた。
なぜか味気無かった。

お気に入りのセーラー服に袖を通してる間も考えてた。
なんでイキナリ。
どうして父さんの会社が。
これから私たちはどうなるんだろう。
などなど。

けど、答えも何も出なかった。

空虚で空っぽなココロだけが残った。