「美雪」

焦っている、と言う訳ではなく……回りに秘密にしておくのは美雪が辛いんじゃないかと。

俺が内心そう思っていると。



「大丈夫……私、辛くないから」

美雪は、まるで俺の思っている事が聞こえているかのような返事をした。



「ほら、みんなには秘密だけど、今こうして楽しい時間を過ごせてるから……今のままでも、幸せだよ」

「でも」

「前に涼が言ってくれたよね?」



俺の言葉を遮り、美雪が言った。



「何?」

「私が初めてここに来た時、帰りたくなくて駄々をこねたら、『俺はいつかおまえの両親に挨拶する時、胸を張って挨拶したい』『在学中に付き合っていた事を話せば、反対される可能性が高いから、それ以外で反対される原因を作りたくない』って」

「ああ、言った」