大きな交差点。 信号は赤く灯っていた。 信号待ちをしている 私たち…家族。 たくさんの人。 白い乗用車が 向かって来たとき 小さい私の瞳が捕えた まだ小さい黒。 身体中熱くなり 脳が命令する。 アレを助けなきゃと。 熱を持ったまま 駆け出す小さな身体。 私を呼ぶ父の声。 愛ちゃん、優美さんの声。 他人の悲鳴。 近付く黒との距離。 距離がゼロになり、 抱き上げた。 横を向いた私、 白い乗用車。 父の声が近い。 私が最後に覚えているのは 白と黒のコントラストと 父の私を呼ぶ声──…