ついでに、笑ってるうちに気づいたのだが『彼女』。


なかなか不機嫌そうに表情を歪めていた。


なるほど。この女は罵られるより笑われる事のが不愉快なのか。


これは良いことを知った。覚えとこう。


「で、お前の用件はあれか?サッカー部にトドメをさしに来たのか?」


「……よく、わかってるじゃない」


暗闇の中。対峙する『彼女』と『彼』は互いに笑い合う。


けれどそこに友情なんてありはしない。


あるのは、例えるならハブとマングースの睨み合いにも似た空気。


喰うか、喰われるか。


ただそれだけ。


『彼』は言う。


「日付は、『雷姫』。君が決めると良い。種目は俺が選ばせてもらうがな」


やけに、自信ありげな『彼』の態度に『彼女』は「種目は決まってるのか?」と返す。


『彼』はより一層に口角を吊り上げて、言った。


「種目は、団体戦だ」と。









『彼』。現サッカー部主将たる【兵庫 播磨(ひょうご はりま)】。


かつて。缶蹴りにおいて数多の武勇、戦歴からいつしか羨望、畏怖から。


人は『彼』を【勇者】と呼んだ。


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