その時。


視界の中の『鬼』が肩越しに振り向く。


瞬間に『彼女』も気付いた。


ーー中庭に何者かが入り込んだ。


不確定要素(イレギュラー)だ。


別にそんなのは珍しい事ではない。ここはあくまで中庭。全ての学生に解放されている場所なのだから。


それを踏まえた上で『彼女』には幾分もの疑問があった。


今は、朝なのだ。


朝早くから中庭にやってくる人間など普通はいない。


それに加え今日は入学式。


だとすれば彼は新入生だろうか?


「おっと」


そんな思考にかまけていたからか『鬼』の接近に気付くのが遅れた。