一瞬の『鬼』の気紛れで見つかる。


それ程の距離。


息を止める。


存在を溶かす。


けれど澄み切った黒真珠とも称される『彼女』の双眸はけして缶から離れる事はない。


緊張が体を支配する。


喉が渇く。水が欲しい。


そんなもの無いことなど知ってるのに求めてしまう。


缶を見ているから喉が渇くのか?


喉が渇くから缶を見ているのか?


その問いは意味をなさない。わかりきってる事だ。


『彼女』は無意味な一人問答に苦笑した。


この緊張感、駆け引き、喉の渇きさえ。


たまらない。


この戦が楽しいからこの世界に身を浸しているのだ。


『彼女』は再確認の意を込め心の内でそう呟いた。