桃東は再びフランシアに話し掛ける。


「あれは、葡萄園のせいじゃないよ?」


出来るだけ、優しく。囁くように話し掛ける。


それはまるで子供に諭すかのように。


桃東は知っていた。


この二年間、フランシアがあの人の事で自分を責め続けてきた事を。


その名前を思い出すだけでも、ダメなのだ。


ならば思い出さなければいい。


いつだったかハレルヤがそう言った事があったが、それは無理な話だ。


桃東も、フランシアも、多分ハレルヤさえあの人と過ごした二年間は忘れる事は出来ない。


自分達の高校生活の礎を組んでくれたあの人の幻影は一生ついて回るのだ。


けどそれは別に、桃東とハレルヤは思い出として割り切る事が出来ていた。


だがフランシアはそうは行かない。