「さ、帰ろ。姫様」


「あれ?僕の事はシカトかいフランシア」


「ハレルヤ。私の事をフランシアと呼ぶな。下の名前で私の事を呼んで良いのは姫様と」


瞬間の事。


フランシアはハッとした様子で口を押さえる。


「…葡萄園。気にしなくても大丈夫だよ」


『彼女』。桃東は優しい笑みを浮かべながらフランシアを抱き寄せた。


暖かな、彼女の体温が伝わる。


「僕にはハグしてくれないのかいアズマ」


「そこの有刺鉄線にでもハグしてもらいなよ」


「酷いなぁ」


両の手を広げ、芝居がかったように笑ってみせる。


梨乃原にとってはナチュラルなリアクションなので今更桃東が思う所はなかったがウザくはあった。


たまにウザくて「死なないかな」なんて思う時もあるくらいだ。