「いい機会だからもう一つ、教えたげるわ」


は?


何をーー。


ーー教えてくれると言うんだ。


そう考えるより早く僕の視界が反転した。


さっきまで足の裏にあった青々しい芝生は頭上に。


渺々(ひょうびょう)と広がる青空は足の下に。


桃東先輩が僕を投げ飛ばしたのだ。


背中を見せていた先輩は突然足を止め、それに突っ込むような形になった僕の懐に潜り込んで一瞬の内に受け流されるように投げ飛ばされた。


混乱はなかった。


ただ、代わりに打ちつけた背中が痛い。


仰向けで転がる僕の視界の中。


青い空の中を赤い不二家ネクターがクルクルと宙を舞っていく。


僕は缶の行方を見守りながら、そこでようやく気がついた。


僕の、負けだと。


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