「なんて、思ってるなら君はまだまだだね」


僕の頬を撫でる疾風。


耳に届いたのは清冽な女性の声。


誰のものかなんて考える必要はなかった。


くそ。安易に勝利を悟った僕がバカだった。


先輩達は本気かどうかはともかくとして『缶蹴同好会』を名乗っているのだ。


あんなしょっぱい作戦が簡単に決まる訳がない。


「…ちくしょうっ!?」


恨み節を吐いてはみたが桃東先輩は既に僕の横に並びかけてーー。


「足、遅いのね?」


な、なんだとっ!?


既に桃東先輩は僕を抜き、既に不可視の円の中に足を踏み入れている。


最初の加速度の違いは仕方ないとしても僕より瞬間の速度が速いだなんて!?


後悔が先に立つことはない。


僕はそれを今改めて思い知った。