「……やるの。缶蹴(かんしゅう)を?」
……え?
突然変わった口調。
さっきまでのあっけらかんとしていた体(てい)はどこにもない。
茜子は続ける。
「夏樹は、……そう。多分、やるんだね」
多分、やるんだね。って。
「いやいや、そこに書いてあるのは仰々しく書いた缶蹴りのルールだけだぞ?」
「わかるよ。そんなの」
茜子の手に渡っていたプリントが僕の机にパサリと不時着を試みる。
プリントはひったくられた時点ではついていなかったシワを身に着けて。
「私も、夏樹と同じ。『あの人』を追いかけて来たんだもの」
「茜子。僕は別に」
「ううん、夏樹。君は、きっと進む。あの、戦いの舞台に。……だって君は、私と同じだから」
その直後学校に始業を告げるチャイムが鳴り響く。
「それじゃあ、ね。夏樹」
茜子はそう言葉を残して教室から出て行った。
茜子もまた、『バカ姉』の影を追ってるっていうのか。
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