「いや、すること無いですよ?」
なんて事だ。
一ページ前の切実な独白は無駄になってしまったようだ。
「俺の一ページ前を返せ」
「?」
言ってる意味がわからない。
そんな感じの表情。
「で、お前はどこに向かってるんだ?」
弟は答えず、ただ正面を指差す。
だが正面にあるのは突き当たりの壁。
それに嵌(は)められた大きな窓。
…窓。
「ま、まさか…。お前」
「……昔の、バカ姉を思い出したんだ」
昔のバカ姉?
あの『伝説』と窓が何の関係が?
しかし、そんな事を問う時間も余裕もこの男にはまるで無いことなど明白。
西木はまた、小さく笑う。
そして加速。
簡単に西木は弟の前に出る。
やはり速度だけなら自分の方が早い。