「何なんでしょう、あいつ」


バタンとドアが締め切られ、茜子を見送ったトライゾンの瞳が『彼』を見る。


「彼女には、彼女なりの考えがあるんだ」


「だからと言ってあんなのを許していいんですか?」


「…トライゾン」


びくりとトライゾンの肩が跳ね上がった。


『彼』の呟いた二つ名はどこか底冷えのする、抑揚、表情のない声。


「君まで僕に逆らうつもりかい?」


「い、いや。そういう事じゃないんです!?」


わたわたと両手を振り潔白を主張する。


そんな事わかってるのに。


「冗談だよ。トライゾン、君は僕を裏切らない」


『裏切り者』の二つ名を持つ彼女には、なかなか毒のある皮肉な気がする。