「会長?」


「ん。あぁ、聞いてたよ。ありがとう」


そう言うと茜子は深くお辞儀をし自分の席に着く。


彼女の席は『彼』の席から見て右手前に位置する。


机には書記と書かれた錐が立ちそのまま彼女は自らのパソコンで仕事にかかり始めた。


カタカタとキーボードの打鍵音が響く。


「缶蹴同好会の様子はどうだった?」


打鍵音は止まらない。


しかし彼女の目は『彼』を向く。


「様子、ですか?」


「うん。皆落ち着いてたかい?」


「…通達を手渡したのは中庭で練習中でしたから若干やかましかったですけど、渡した後は皆さん静かになりましたよ?」


「そうか」


中庭、か。


今となっては懐かしい響きだ。二年前は毎日通っていた練習場だったが。