「だと、いいけどね」


む。なんだその含みを持った言い方は。


「詳しくは知らないんだけど、昔色々あったみたいだよ。ほら、おたくの部長さんと」


「色々。…ねぇ」


その時、丁度良く休み時間の終了を告げるチャイムが鳴った。


周りのクラスメート達が慌ただしく自分の席に戻り始める。


「おっと時間みたいだね。私そろそろ戻るよ」


立ち上がり、けれどイスが茜子の臀部との別れを惜しんでいるのかギギギと音を立てる。


「…あ。さっきの忠告だけどさ」


「うん?」


茜子が僕の机の横に立ち止まって、僕の肩に手を置く。


「もし、君がまだ缶蹴りを本気でやる気がないならば。もう、この辺でやめておいた方が……君の為だよ」


「は?何を」


言ってるんだ。


しかし言い切る前に茜子は「バイバイ」と小さく呟いて教室から出て行った。


缶蹴りを本気でやる気がないなら……。


尋ねようとした思考は虚空を掻いて、そのまま霧散した。


★ ★ ★