「あぁ。そう言えば三人とも二つ名持ちでしたね」
『彼女』は僅かに笑みを浮かべる。
「ですが、二つ名持ちなら私達も同じ。それにあの中では実力で二つ名を持つ者は一人しかいません」
『……【トライゾン】。今日は饒舌だな?』
【トライゾン】と呼ばれた『彼女』は口に手を当て、今までの自分の言動を思い返す。
「申し訳ありません。会長」
『彼女』は電話越しに頭を下げた。
『いいさ【トライゾン】。自分の意見は言うべきだからね』
「…はい」
『多分、君には缶蹴同好会と我々が相対した際には力になってもらう。わかっているな』
『彼女』は無言で「是」を返す。
『激突は、近い。【トライゾン】、君には期待しているよ』
そこで電話は切れた。
彼女はしばらく、ツーツーと無機質な音を垂れ流す携帯を耳に当てたまま空を眺めていた。
【トライゾン】
それはフランス語で不実。
つまりは裏切りを指す。
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