恐る恐るまぶたを開くと、僕の目の前に手の甲があった。
「夏樹君。よく、守ったね」
聞き慣れた女性の声。
春風に靡(なび)く濡れ羽色の髪。
絵画のように幻想的で彫刻のように滑らかな横顔。
「【雷姫】…」
【勇者】が驚きを隠す事なくおののいたように二つ名を口にする。
いや、驚くも何も一応視界に入る位置にいたとは思うんだけど。
けど今は素直に「助かった」と思う。
「よくもまぁ、ウチの新人をイジメてくれたね。缶蹴協会規定じゃ過剰な攻撃は禁止されてるのに」
「ハッ!知ったことか!!」
ビュッ。と【勇者】の左ハイキックが桃東先輩の頭を狙う。
しかし桃東先輩は身を落としハイキックをかわす。
「バカがっ!!」
喜悦を孕んだ【勇者】のそれ。
ハイキックが、振り抜かれずそのままかかと落としに切り替わる。



