「お、お前みたいな…っ!!卑劣な奴に、僕が負けるとでも思ったか!?」
よろよろと立ち上がり、僕は【勇者】を睨み付ける。
けれど、やはりさっきの腹部へのダメージは深刻で、いまだに力は入らない。
「どうした、ボロボロだな?そんなんで俺を挑発した所で何になる。大人しく、『神奈河』の敗北を認めろ」
「……あんた、ウチのバカ姉に勝った事ないんだな?」
【勇者】の片眉がピクリと跳ねる。
「図星か。そりゃあそうか。あんた弱いものにしか強く当たらなそうだしな」
「ガキ、それ以上喋ると姉のもとに送るぞ?」
「……ふん。やれるものなら、やってみな?」
瞬間、【勇者】の体が僕の目の前に現れた。
やはり、早い。
まるで大弓でも撃つかのように刹那のうちに引き絞られた【勇者】の拳が僕を向く。



