言えば、解放してくれるんだ。
楽になれるんだ。言おう。
「か、『神奈河は』」
「おう、やっと言う気になったか。利口だな」
なんとでも言え。
「『【勇者】に』」
ニタニタと勝利に歪む笑み。
本来ならば、僕なんかじゃなく。缶を狙い、そして蹴り飛ばすはず。
なのに【勇者】はそんな本質を忘れ、僕から。いや、『神奈河』から誇りを奪おうとしている。
何が【勇者】だ。
「おら。早く、言い切りやがれ」
「……か、『神奈河は【勇者】に』」
「【勇者】に?」
「……負けるかよっ!!」
「なっ!?」
ありったけの力を込めて【勇者】の靴を頭から引き離し、生まれた一瞬の隙の内に僕は【勇者】と距離を置いた。



