これは、チャンスだ。
僕が、【勇者】を倒せという。
神か、仏か。別にどっちだっていい。
このチャンスをみすみす逃すつもりはない。
恐れはない。
震えはない。
僕ならやれる!!
何の根拠もないけれどそんな自信に後押しされて、僕は駆け出した。
【勇者】に向かって。
駆け出すと彼我の差は驚くような速度で詰まっていく。
【勇者】の顔が鮮明になると、【勇者】は少し驚いたようだったがそれはすぐに笑みへと転化した。
けれどその笑みに、本来の『笑い』の意味などない。
まるでそれは、狂喜を。あるいは狂気を纏った笑み。
彼我が激突する。
その瞬間に僕は右拳を打ち込む。
しかし。
顔を狙ったそれは【勇者】の左頬を掠めて空を切る。



