まるで武勇でも誇るように、桃東先輩が右手を空に突き上げる。
今更なんだけど。
これって缶蹴りなのかなぁ?
僕はため息を一つついて、身を翻した。
なんで身を翻したのか。
理由はない。ただ突発的に体が逆を向いただけの事。
ただそれだけ。
だが。
なんだ、…あれは。
部室棟からは、まるで反対側。
校庭の端。障害物らしきものは何もなく、見えるのは金網。
それと、何者かが、こちらに走ってきている。
胸の鼓動が、速くなる。
あれはサッカー部主将。
僕が戦いたいと、望んでいた強者。
勝ち方を知っていると桃東先輩にいわしめた敵。
「【勇者】…」
僕は肩越しに桃東先輩に振り返ったが桃東先輩はまるで気付いていない。



