ク、クラウツ共?
何だそれは。
「ドイツに対する、蔑称。日本に住んでるけど、お国柄でね」
「あ、ああ。そうなのか」
いや、別にそんな事はどうでもいい。
問題なのはなぜ東田がいるべき場所にこの女がいるか、だ。
まさか。
「私に、隙を見せていいの?」
その言葉に、振り返りかけた首が止まった。
だが。
「【アーベント・イェーガー】。悪いがもう勝負はついている」
「否定は、しない」
そんな彼女に俺は失笑しか出来なかった。
これは、彼女。【アーベント・イェーガー】の力を過大評価してる訳じゃなく、ましてや俺が弱い訳でもない。
ひとえに、相手が悪すぎるだけだ。
…俺達の負けだ。
「降参だ。ほら、俺の電話を貸してやる。仲間に勝利を伝えてやるがいい」
俺は持っていた携帯を彼女に向かって放った。
携帯がクルクルと回りながら彼女の手の中に収まろうと言う瞬間、俺はそれを待っていた。



