少し。 少しだけ。 昔を思い出した。 長の墓の前でぼんやりとキセルを燻らせる。 あん時もそうしたっけか。 もう自分以外生きる者のいなくなった里で。 この疫病で死んだみんなの墓標を造って。 そんで。 一番最後に死んだ兄ぃにが最期に創ったこの最高傑作を。 手の平を見る。ぎゅっと握ってゆっくりと開く。ぱちぱちと音がして小さな雷の玉が開いた掌に現れる。水分を含んだ風を纏ったそれはほかの雷電の民にはない力。