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「何してんだよ、バカ!」


「だって、貼り紙にもあっただろ?
 何でも聞いてください、って」


「自販機は“何でも”に含まれねーよ!」




大声で言い返すと、道行く人々が何人かこっちを振り返った。

俺に目を止め、それから兄さんの方に視線を映す。


女子高生のグループは、兄さんのあまりの美貌に頬を赤く染め、携帯を取りだして写真に納めようとしている。




「これ以上外で変なことしないでくれよ?
 兄さんはただでさえ目立つんだから」


いや、ホント言うと家でもしないでほしいんだけど。


「目立つのはアサヒの方だろ?
 ほら、今だって……」


そう言う兄さんの視線の先には、さっきの女子高生達の姿。


「お前がカッコ良いから見てるんだよ。
 手でも振ってあげたら喜ぶぞ?」


親指でクイクイと彼女達を指さし、兄さんはキラリと歯を見せて笑った。


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「こんの鈍感野郎っ!!」

「グハッ!」


鈍い……鈍すぎる!!

なんなんだこの鈍さは!?

これが世に言う“鈍感力”ってやつなのか!?




「おい、なんで走るんだ!?
 転んだら危な……ゴホッ」


俺の放った拳は見事鳩尾に命中したらしい。


咳き込む兄さんに振り返って、

「そんなことより自分の心配しろ!」

そう叫んでやった。




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