容姿端麗。
頭脳明晰。
スポーツ万能。
仕事だって何でもこなすし、
オレみたいに人付き合いも下手じゃない。
そんな、誰もが羨むオレの兄貴。
だけどホントは、
一人でネクタイも結べない。
メールだってちゃんと打てない。
忘れ物だってしょっちゅうだし、
片付けだってろくにできない。
オレよりずっと年上なのに、
オレよりずっと頼りない。
そんな、ダメ男でダサ男。
なんでこんなのが兄貴なんだろう。
そんな風に、思わなくはない。
でも、それでも。
「あ、鍵あった」
「はぁ!?どこに!?」
「ズボンのポケットに。」
「全部探したんじゃなかったのかよ!?」
「鞄の中なら隅から隅まで探したんだけど…
ズボンにポケットがあることをすっかり忘れてたよ」
「……バカ兄貴っ!(心配して損した!!)」
どうしようもない兄貴なのに、
何故か憎む気になれなくて。
一緒にいると疲れるのに、
傍にいないと不安になる。
文句や愚痴を並べつつも、
ついつい兄さんの世話を焼いてしまうオレ。
そんなオレも、兄さんに負けず劣らずバカなのかもしれない。
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