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「電話誰?また兄ちゃんか?」
オレが電話しているところを見ていたらしい。
すっかり目が覚めたらしい太一が、うーんと伸びをしながら聞いてきた。
「………あぁ」
なんか、返事すんのもダリィし。
つか、のん気な太一がやけにムカつく。
「アサヒの兄ちゃんて、ブラコンだよなー」
ブラコン?
あれがか?
やめてくれ。
あんなだらしない兄貴、あんな手の掛かる兄貴、できるんなら誰かに譲りたい。
「俺も兄ちゃんほしかったなー」
………あげようか?
いや寧ろもらってくれ。
リボン掛けて、超可愛くラッピングして、お前の枕元に置いといてやるよ。
…………はぁ。
帰ろ。
まだ二時間目だけど、帰ろ。
「あっれ、アサヒ帰んの?」
「疲れた、帰る」
「サボったりしたら兄ちゃんに怒られるぜ?
ニヒヒ」
カッチーーン。
ボカっ!!
「いってぇー!!
何すんだよ、アサヒ!」
「煩い、この万年居眠り野郎が!」
「なんだとー!」
「帰る!!」
ったく、どいつもこいつも!
―――奪われた気力と舞い込んだイライラ。
俺の上には初夏の青空。
何を勝負した訳じゃないけど、その青空に俺は完敗した気分だった。
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