私は人があんなに苦しい表情をするのを初めてみたような気がする。

その表情が今も私の胸に焼き付いて離れないほどに章也くんの表情は印象的だった。

そして、心が痛んだ私が思わず口にしたのが、あの「ごめんね」という言葉だったのだ。

あの時、私は強く想われていると思った。

男の子に告白されるということ自体が初めてだったからそう思ってしまったのかもしれない。

しかし、少なくとも今の章也くん様子を見る限り、昨日の余韻すら感じる事は出来なかった。

思い違いだったのかもしれない。

想いの大きさとは人それぞれだ。

一年間もずっと想ってくれたことやあの時の表情を見て、私は章也くんが私の事をすごく好きでいてくれたと思っていた。

けど、本当はそんな事もなくって、すぐに忘れてしまう程度のものだったかもしれない。

そう考えた私は、男の子の友達とふざけあって大きな笑い声をたてている章也くんからそっと目をそらした。

 その瞬間をまるで見計らったように親友の亜衣が「おはよう!」と大きな声で声をかけてきた。

ニコニコと笑っている表情がなんとも可愛らしい。