「おかあさんがね、すきだから」


男の子は路上で寝ていた
黒い犬をなでながら言う。

「きれいだもんね」

きのこ頭の男の子の顔と
私が持っているバラを
見比べる。

バラは
茎の部分を強く握られて
少し痛そうだ。

どちらも
悲しそうな、でも
これから行く私の家を
楽しみにしているように
見えた。