夜の10時に遊んでくれる友達なんているわけない。
駅前のゲーセンしか行く場所はない。
ここは、同じような中学生が集まっている。
みんな勉強の息抜き。
眩しい照明。
耳が痛くなるほどの電子音。
笑い声。
流行の音楽がかき消される。
しばらく来ていなかっただけで、プリクラは機種が変わっていた。
私の知らない新しいプリクラがいっぱいあって、
ひとりで興奮した。
中学3年生の願いなんてかわいいものだと思う。
欲しいんだ。
あのぬいぐるみ。
塾の帰りに見かけた高校生がかばんにつけていたぬいぐるみ。
ここのゲーセンの中で1番人が集まっている場所に、
そのぬいぐるみは存在していた。
「欲しい」
呟いてみる。
うるさすぎて、誰にも聞こえない声。

