恋する受験生




「俺には、うるさく言ってくれる親がいない。死んだわけじゃないけど、俺には無関心。俺が優等生だったから安心していたんだろうけど、寂しかったりもするんだ」



「うっそ~!うるさくない親なんてうらやましい」



私は、俊の寂しそうな横顔を見ていて、お父さんとお母さんのことを思い出した。



「怒らないけど、褒められることもない。俺は、合格して当たり前、優等生でいることが当たり前。テストの点数さえ良ければ、俺は何をしてもいいんだろうな」



そんな親もいるんだ。


親ってうるさいものだと思っていた。



俊は、私の腕に抱かれたうさぎのぬいぐるみの頭を叩いた。



「こいつがいれば頑張れるだろ?なんだかんだ言って、あと少しじゃん」




私はうさぎをぎゅっと抱きしめた。


俊、会ったばかりの謎の高校生。


でも、今わかったよ。




「私、俊が好き」



「え?頭、大丈夫?」



「今日、俊に会えなかったら、私は毎日自分のことを悲劇のヒロインだと思っていたと思う。でも、俊に会って話を聞いてもらって、なんだか頑張ろうって思えた。だから、私、俊のことが好き!!」



また豆鉄砲をくらった顔をしている。