「俊!!イケるぞ」
太っていて、一番モテそうもない男が一番声がでかい。
今、挑戦している人はいかにも頭が良さそうな優等生っぽい顔。
勉強もスポーツもできます、みたいな。
でも、こういうのに限って性格が悪かったりする。
「あ~!!!惜しい!!」
私の大好きなぬいぐるみは、一瞬浮かび上がった後、落ちた。
いい気味。
取られないで。
私がいつか取るから。
「俺、もう帰るわ。親からメール来たから」
太った男はそそくさとゲーセンを出た。
周りにいた人も数人、俺も帰ると言って出ていった。
「ばっかじゃない」
小さな声で言ってみる。
だって、3000円つぎ込むと言っていたあの人は、まだ熱心にぬいぐるみを狙っていた。
きっとそんなに欲しくない。
取りたいだけ。
私の視線にも気づかずに、100円玉を入れ続ける。
もうそろそろ2000円突破。

