「じゃあ、オレンジで」

「はい」

長めに切ったリボンをまだ少しさみしい花束に巻く。

会話をしながらも手を動かす。

この男性は大切な女性に渡すそうだ。

……この花束を受け取ったその女性に笑顔を。

気持ちを込めて、輪が左右に3つできるように結んだ。

結び目がほどけないように気をつけながら、親指ではさみの背に押し当てたリボンをしごくと、くるくるになる。

いつもよりうまくできたカールに満足した私は、笑顔で花束をお客様に渡した。

「ありがとう」

受け取ったお客様のほとんどがそう漏らすのは、花束の力の1つだと思っている。