拾い上げてみると、四つ折りにされた画用紙だった。 開いて中を見てみると、クレヨンで海の絵が描いてある。 そんなに真剣ではない、落書き程度の絵だった。 だけど、さっき彼にとっては大切なもののような気がして、周りを見渡してみる。 彼はもう、人混みの中に完全に消えていた。 「…どーすんだ、これ」 その場に捨てることもできず、悩んだ挙げ句に結局カバンの奥にしまった。 予想だけど、毎日電車に乗ってそうな感じだったし いつかまた会ったら、渡せばいいか。 そのくらいの、軽い気持ちだった。 _