自分で作ったごはんが嫌い。


料理が苦手なわけではない。
むしろ上手なほうだと思っている。

世の男なんて、結局最後は「肉じゃが」って言うのよ。
料理は女が作るものだと思っている。

別にね、それについて今更どうこう言うつもりはない。
努力だってする。
一通りのものは作れるのよ、これでも。


・・・・でもね、いくら向かいで食べている相手が
「美味しい」って言ってくれても、信じられたためしがない。


美味しくない…。


まずいわけじゃないけど、ちっとも美味しくなんかない。


なにこれ? 塩の分量間違えた?
火を通しすぎたからいけないの?
・・・そんなはずないんだけど・・・。


「いやあ、さっちゃんの作った飯はいつもうまいなー」


馬鹿じゃない? この男。 味音痴?
じゃなきゃ、誰にでも言っているお決まりの言葉なんだわ。

この暢気そうな笑顔のどこを信じればいいの?

・・・もう限界・・・!!


「ごめん、食欲ないから今日は帰るね」
「え? ちょ、ちょっと、大丈夫?」
「風邪でもひいたかな~? とにかく帰って寝る。後片付けよろしく~」


返事を待たずに、あいつの鼻先でドアを閉めてやる。
大丈夫じゃないのはこの先の未来のほうだな。


「もう何回目だよ、ばか!」


呟いて、思いっきりドアを蹴っ飛ばすふりをした。