彼はまたしてもわたしの髪をつかみ、そのまま引きずるようにして浴室へ向かった。
「来い。今すぐ処分してやる」
「いたたたた……」
乱暴に開けられたドアから浴室に入ると、つんと鼻をつくにおいがした。
生ごみのような、さびた鉄のような、胸がむかむかするにおいだ。
見ると、なにやらうす汚れた浴室だった。
床にも壁にも赤いカビのようなものが生えていて、妙に年期が入っているような気がした。
どこもかしこもピカピカの円城寺邸にそぐわない場所のような――
そこでわたしはピンときた。
このにおいは血だ。
間違いない。
わたしはこのにおいを知っている。
このままでは取り返しのつかないことになると直感したわたしは、すぐさま行動に移した。
後ろから彼の股のあいだに手を入れて、そこにあるものを力いっぱい握りしめた。
「えいっ!」
おう、というくぐもった声を漏らし、円城寺くんはわたしの髪から手を離した。
そのすきを逃さず、両手で彼を思いきり突き飛ばすやいなや、わたしは身をひるがえして浴室を飛びだした。
背後から、獣の雄たけびのような声が聞こえた。
「来い。今すぐ処分してやる」
「いたたたた……」
乱暴に開けられたドアから浴室に入ると、つんと鼻をつくにおいがした。
生ごみのような、さびた鉄のような、胸がむかむかするにおいだ。
見ると、なにやらうす汚れた浴室だった。
床にも壁にも赤いカビのようなものが生えていて、妙に年期が入っているような気がした。
どこもかしこもピカピカの円城寺邸にそぐわない場所のような――
そこでわたしはピンときた。
このにおいは血だ。
間違いない。
わたしはこのにおいを知っている。
このままでは取り返しのつかないことになると直感したわたしは、すぐさま行動に移した。
後ろから彼の股のあいだに手を入れて、そこにあるものを力いっぱい握りしめた。
「えいっ!」
おう、というくぐもった声を漏らし、円城寺くんはわたしの髪から手を離した。
そのすきを逃さず、両手で彼を思いきり突き飛ばすやいなや、わたしは身をひるがえして浴室を飛びだした。
背後から、獣の雄たけびのような声が聞こえた。