「だから私、先に死ねないじゃない」



…………



「あなたを置いて死ねないわよ」



……あ。



「私があなたを看取らないと、最後まで世話しないと」



………あぁ!



「あなたの全てを片付けてからじゃないと、私は安心して逝けないの」



そういう意味!



「それに私が死んで、泣くあなたも見たくないの。あなた泣き虫なんだもの。ユニセフのCMだけで泣くんだもの」





……何だ。

それなら、そう言ってくれれば。





「………ぷっ」

「何笑ってるの?」

「いや…」

「生意気だとか思ったでしょ」

「君らしいと思ったんだよ」




確かに、君にしかできない事だ。

それに、そんな君の意地っ張りに一生付き合えるのは、僕だけなんだろうな。




「分かった。君より先に逝かせてもらうよ」

「そうしてね」

「でも、僕が100歳まで生きたらどうするの」

「私が101歳まで長生きするわよ」



ああ。

君は、必ずそうするだろうな。





「じゃあ、おばぁちゃんになっても似合う指輪を選ばないと」





笑った僕に君は、少し恥ずかしそうに、けれど嬉しそうに笑った。


.