幸せのカケラ

おかしな人と笑いながら、君はバッグの中身をテーブルへと広げ始める。

やっぱり念は届かなかったみたいだ。




肩を落とし、うなだれる僕。


ふいと視線を君に向けると、それは目に入った。





君の耳たぶ。





思い出した。


付き合い始めた頃、ピアスを空けようとした君を止めた事。





僕は、君の耳たぶが好き。


小振りだけど綺麗な形で、若干肉厚で、白くてまぁるい。

触ると、ふわふわで柔らかい。


まるで大福餅みたいで。





それを言ったら君は、ピアスを空けるのをやめたんだ。





あれから10年経つけれど、今でも君はピアスを空けてはいない。







食料品を整理する君の横顔に手を伸ばし、耳たぶに触れてみた。





「え、何?」

「何でもないよ」

「どうして耳に触るの?」

「何となく」

「何となくって、ビックリするじゃない」

「うん、ごめん」

「触りながらごめんって…」

「気にしなくていいよ」



もう、と軽く頬を膨らませた君。




「……あ」

「何?」

「お醤油、お店に忘れたみたい」

「醤油?」

「多分、カウンターに忘れたんだわ」