窓から滑り込む、冬の匂いを含んだ風がカーテンをふわりと揺らした。
「まず始めに質問からいこうか。」
そう言って目を細めるヒヅカ先生の目尻には、深いしわが刻まれていた。
「タニバタさんはどうして私と話しているのか分かるかい?」
「はい、まぁ…
昨日の事ですよね…?」
分かってる。
先生は私の今抱えてる事無理やり吐き出させようとしてるんでしょ?
「あの…一昨日の話しになるんですが。」
あたしはきっと逆らっちゃいけない。
言わなくちゃ…
「いいんだよ。話さなくても。
でも気が向いたら話してほしいな。」
何かが違う…
どうして聞き出さなかったのか、あたしには分からない。
けど…
けど、それが嬉しかった。
「さて、聞きたい事も聞いたし、もう終わりにしたいんだがなー…。」
そう言って苦笑しながら、人差し指でポリポリと頬をかくヒヅカ先生。
…ん?
今終わりって言った?
「あの、もういいんですか?
まだ聞かなくちゃいけない事とか…
あ、あたしちゃんと答えますよ!?」
「落ち着きなさい。
こんな爺と何時までも居たくはないだろう?」
そう言って豪快に笑うヒヅカ先生。
「さてと、30分程早いけど、終わりにしようか。
また、来週話さなくちゃいけないからね。」
そう言って先生は生徒指導室から出ていった。
「えっと、あたしは戻っていいんだよね?」
誰に訊く訳でもない質問をこぼしながら、あたしもドアを抜けた。



