風を切る音がヘルメットごしに聞こえる。
ハルキのお腹の上に置いたあたしの手が少しだけ汗ばんでいるのが分かった。
「なぁ!」
ハルキの声が唐突にあたしの耳に届いた。
「なに?」
風の音に負けないように、あたしは声を張り上げた。
「バーカ!」
「なっ!!」
「でもそんなユズが…」
プーとけたたましく鳴ったクラクションにハルキの声が解けて、聞き取れなかった。
「えっ?何て言ったの?」
「なんでもねーよ!」
きっと、大した事じゃなかったんだ
あたしはこの時、自分自身で勝手に解釈していた。
これから起こる最悪の出来事なんて、予想もしていなかったのだから…



