セツナイロ



と、思っていても、嫌なことがあると時間が流れるのは意外と早いもの。

「行ってらっしゃーい!
これでもかっ!てぐらい怒られてきなさいねー?」

なーんて笑いながら嫌みを言うルナ。
あたしはアッカンベーをして廊下をズシズシ歩く。



相談室とかいきたくないって…



少し歩くスピードを緩めるも、あっさりついてしまった部屋の前にため息を漏らす。






キッと睨む顔にし、ドアをノックしようとしたその時だ。


「アスカは…で……ないんです……」

啜り泣くような、弱々しい女性の声がドアごしに途切れ途切れ聞こえる。


あたしは辺りを見渡し、生徒がいないことを確認したのち、ドアに耳を押し当てた。



「先生、今までお世話になりました。」

…アスカの声だ。


「ああ…、
アスカ、きっと治してこい。
そして帰ってくるんだ。」

「…はい」


…治す?
…帰ってくる?

アスカはただ転校するだけ…なんだよね…?



「先生…
クラスの子には、転校とだけ伝えておいてください…

ユズさんにも、白血病のことは秘密にしていてください…」

さっきの女性…アスカのお母さんだ…。



白血病…………?

アスカが…?


ねぇ、おばさん

おかしいよ?


アスカが病気な訳ないじゃん…

アスカが…

アスカが……





ガラガラっ!

あたしの体は勝手に動いていた。