そのときだよ。フランツの腕から開放されたピーターが凄い勢いで走り出してね。
「ピーター!?」
アリス達の方に逃げてくると思ったんだけど違ったんだ。
ピーターが一目散に向かっていったのは所長室の窓だった。
「お姉ちゃんは関係ないんだ! 見てろインテリ眼鏡!」
ピーターは何をするつもりなんだろう。
一同が凝視しているとなんとピーターは窓を開け、窓の淵に足をかけていてね!
「危ないわピーター!」
アリスがそう言ったのは、窓の外は谷だったからなんだ。
研究所は森を抜けた谷沿いに建っていたんでね。
「ピーター、何をするつもりなの?」
「ずっと言ってるでしょ! ぼくは飛べるんだ!」
まだ瞳を涙に濡らしながら、そうピーターは叫んだ。
アリス達が止める暇もなくそのまま少年は窓からフワリと落ちていった。
「いやぁぁー!」
ウェンディが目を瞑って悲鳴を上げたと同時に、アリスが窓に駆け寄る。

![[短編] 昨日の僕は生きていた。](https://www.no-ichigo.jp/assets/1.0.777/img/book/genre1.png)