集落に来た時のベリルは、ほとんど無表情だった。

 そしてあの印象的なエメラルドの瞳……3歳の子どもが、大人さえも躊躇(ちゅうちょ)するほどの存在感を放っていた。

 初めはどんな人物かも解らないため、セシエルも多少警戒している処はあったが元来、彼は人なつっこい子どもだった。

 考えるよりぶつかった方が早い。と、ばかりにベリルに笑顔を向け続け、今では親友と呼べる仲となった。

 本来の流浪の民よりもそれらしく、ベリルは戦術に長け旅を熟知している。

 長老に集落に呼び戻される度に、子どもたちに旅で出会った様々な事を語ってやっていた。

 あらゆる武器を使いこなすベリルは、集落の子どもたちから尊敬の眼差しを向けられる。

 誰も、彼に適う者はいないというのにベリルは決して自分をおごらない。

 その時に、己の歩みが止まるという事を知っているからだ。

 その姿に、セシエルも大いに励まされるのだった。