もちろん、定住の地はある。老人や女性、子どもが暮らす集落だ。

 国の端、遙か西の辺境の地に彼らの集落はある。

 若い男たちは集落を離れ、その洗練された戦闘技術をもって旅をする。

 だからといって集落で待つ女性や老人が弱い訳でもない。

 かつては旅をしていた老人と、“集落を守る”という目的を持った女性は限りなく強い。

 セシエルのように旅には出ず、子どもたちに戦いの技術を教える者も少なからず存在する。

 そうして集落で学び、17歳になると旅に出る。

 ベリルとセシエルは現在25歳。本来、20歳になると妻を持つ。

 セシエルはすでに2人の子どもをもうけており、一向に妻を持とうとしないベリルに長老はイライラしていた。

「いい加減、長老さまの言うこと聞けよ」

「かまわん、イライラさせとけ」
「まったくお前は……」

 セシエルは肩をすくめる。